Let's Play Music !

 檜佐木修兵は軽音楽部に属している。
 パートはギターボーカル。なかなかうまくいかないバンド編成に頭を悩ませる日々であるが、それなりに楽しく青春を謳歌している。
 やりたい音楽はポップスからロックまで、メタルも嫌いではない。要するにギターが弾けて歌が歌えれば文句は無い。
 しかしやはり本当に好きなのは洋ロックだから、今日も今日とてメンバー集めに奔走している訳である。
 
 「あんた、洋楽やりたいとか言ってる割に再生履歴アイドル物ばっかじゃないですか」
 「しかも思いっきり流行に流されてると来た」
 
 授業開始前の朝休み。
 
 「何すか、突然」
 「一護、お前ベースやらねえか」
 
 突然教室を訪れたかと思えば、ベースパートの男子がバンドを脱退したいと言ってきたので代わりを探している、なんて言ってプレーヤーを付き出して来た。
 やるやらないの返事(主に断り文句)を即断で下した所で納得する筈のない修兵を前に、ひとまず収納アーティストと再生履歴のランキングを見せて頂いた所だ。
 
 「ふうん…………ボンジョヴィにエアロスミス…………王道っすね」
 「何だ、王道は嫌か」
 「いや、好きですよ。俺も洋楽はこの人たちから聞き始めましたし」
 「でもその割に邦楽はあんまりロックじゃないんすね…………コブクロにスガシカオ」
 「弾き語りも好きなんだよ」
 「じゃあこのパフュームだのエーケービーだのは何です?」
 「か、可愛いじゃねえか。皆。曲も良いだろ?」
 「まあ…………バンドで出来ないことも、ないっすけど」
 「そういうお前は何聞くんだよ?」
 「…………邦ロックなら、ヴァンプスとか」
 「何だ、ヴィジュアルが好きなのか?意外だな」
 「違えよ。Vじゃないっての。見た目で判断すんな」
 「他には?」
 「オブリヴィオンダストみたいな洋楽系も好きですし、まあ…………ヴィジュアルだから、って訳では無くて。純粋に音楽性としてムックなんかも聞きますよ」
 
 なんてぐだぐだ言う傍らプレーヤーの中身を改める作業を止めずにいる一護は、入っているアーティストが自分のプレーヤーのそれと少し似通った傾向にあることに気付く。
 
 「でも、言う割に結構檜佐木サンの好きな系統って、俺の好きなのと似てるかもしれません」
 「ほんとか?!」
 「洋楽は特に」
 「じ、じゃあ」
 「でもベースは弾きませんから」
 「そこを何とか!お前、帰宅部だろ?!」
 「嫌ですよ。軽音なんか入ったら目立つじゃないっすか。変に言いがかり付けられないように勉強して成績取ってんのに、誰がわざわざ目ぇ付けられやすい軽音なんかに入るかよ」
 
 気に入ってはいるがやはりコンプレックスでもある橙頭をわしわしとかき混ぜながら、うんざりといった体で話す一護に、修兵は目に見えて肩を落とした。
 
 「阿散井ぃ、やっぱお前やらねえ?」
 「こないだ試しに入ったスタジオで、俺の音楽性のなさは証明されたでしょうが。あんただって酷え顔してたでしょ」
 「おら、もうチャイム鳴ってんぞ。教室行け檜佐木」
 
 廊下からひょいと顔を覗かせる。
 突如肩に手を置かれて飛び上がった一護を横目に、阿近がホームルームへの退却を促した。
 
 「何だ?揃いもそろってそんなもん持ってぴーちくぱーちくと」
 「そうだ、先生って楽器とかやりません?」
 「開口一番何だ、いきなり」
 「バンドのメンバー探してるんっすよ。この際生徒じゃなくても良いんでベース弾ける人探してて」
 「つーか先生って音楽とか聞いてるとこ見たこと無いけど、何か聞くんすか?」
 
 恋次に言われて初めて、そういえば阿近が耳にイヤホンを繋いでいる所を見たことが無い自分に気付いた。
 一緒にカラオケへ行ったこともないし、彼の音楽志向は全くと言っていいほど知らなかったから、少し興味が湧く。
 
 「そりゃ、人並みに聞きはするが…………生憎、ベースの音が入るような小洒落た物は聞かねえな」
 「…………今時、ポップスでも入ってますけど」
 「何聞くんスか?例えば?」
 「…………」
 
 はたと悩み、ぽつりと一言。
 
 「…………津軽海峡」
 「え」
 「天城越え」
 「演歌かよ?!」



 や、阿近さんが普通に流行りの歌聞いてるのとかってイメージ出来ないなー……と。
 一護の趣味は完全に筆者の受け売り。申し訳無い。
 津軽海峡好きです。天城越えもちゃんと聞いてみたいなあ。