Around xxxty

 「…………阿近さんって幾つ?」
 「何だ、藪から棒に」
 
 化準の昼休み。
 昼食は既に食べ終えて、予鈴が響くのを待つばかりの、穏やかな時間…………訂正。勿論、本当は予鈴なんて鳴って欲しくは無い。
 そんなとき、ふと思いついた一言だった。
 
 「阿近さんってさ、結構年齢不詳じゃねーか。見た目から何歳か判断できねえっつーか」
 
 二十代前半って言われたらああそうなのか、って納得できるし、三十代に片足突っ込んでるっつわれてもそれはそれで分かるって言うか。
 
 「失礼な話だな」
 「本当のことなんだから仕方ねーだろ…………で、幾つ何だ?」
 「自分で計算しろ。俺だって覚えちゃいねえよ」
 「何だそれ」
 
 面白くもなさそうに赤ペンを片手に仕事へ勤しむその横顔は、精悍な若さが宿っているようで何処か老成した雰囲気も醸し出している。
 不思議な人だ。
 
 「ええと、十八歳で高校卒業して…………阿近さん、浪人した?」
 「企業秘密だ」
 「…………じゃあ、取り合えず一年浪人したとするだろ」
 
 出身校は国で一番難しい、かの大学。一浪程度じゃ済まないかもしれないけれど、そこはそれ、阿近さんだから。
 
 「単位フルでとって四年で卒業して…………そのまま教師?」
 「馬鹿言え。俺は元々教師じゃねえっつってんだろうが」
 「あ、そうか。研究室からの派遣だっけ」
 
 ということは、最低でも院試を受けて大学院へ入学し、何年か在籍して資格を取って、研究員になっている筈だ。
 そしてその研究員としてのキャリアをある程度積んだ段階で教職を任されている訳で…………って、
 
 「かなり少なく見積もっても、高校卒業から十年以上は経ってるよな。確実に」
 「そういうことになるな」
 「俺、今十六歳なんですけど」
 「そうだな」
 「…………もしかしなくても、結構年の差ある?」
 「だから、年寄りには無理させんなっつってるだろうが、いつもいつも」
 
 別段意識したことも無かったのだけれど、目の前の痩身が自分よりも下手をすれば一周りも年上なのかもしれないという、その事実。
 何だか少し面白い。
 
 「何だ、阿近さんアラサーかよ」
 「悪いか?寄る年の波にゃ誰しも勝てねえもんなんだよ」
 「じゃあこれからはもっと労わってやらねえとな」
 「おう、そうしろそうしろ」
 
 言ったところできっと、年寄り扱いされれば猛然と怒りだす彼のこと。
 取り合えず採点業務で疲れているであろうその肩を叩くところから始めようか。



 阿近さんは現役ストレート。でも高校は行ってなかったりすると良い。